「っ!
危ないね…
気をつけて」
そう微笑みかけてきたとおるさんに、ドキッとした
「ありがとうございます………」
不覚にも頬を染めた私は
下を向いて隠した
「………………あの、
寒くない?」
そう言われて
「少しだけ……」
指で少しを表現しながら答えると
サッと何かをかけられた
手で確かめたらパーカーだった
「…え?」
唖然としながら情けない声を出した
「あっ、えっと、これ、
洗って返しますね」
そう言うと
「良いよ、
それ、出ていった母さんのものなんだ」
そう言われて
「じゃあ、もっと返さないとだよ」
そう言うと困ったように
「良いんだよ……
母さんは俺たちを捨てたんだ…
しかも、出ていったのは幼稚園頃のことなんだよ」
そう微笑みかけてきたとおるさんは
悲しそうだった
「とおる、さん…」
顔を覗くと
泣きそうな顔をしていた

