私服に着替えて女将さんに断りを入れて外に出た


「お待たせいたしました!」


そう言いながら手を振り駆け寄った


「じゃ、行こっか。」


そう笑いかけられて横を歩いた


長い沈黙が寂しくて、


「あの………」


そう声をかけると
ん?
と、返事をして優しい目を向けてきた


意を決意して


「私、まだ自己紹介してませんよね?
佐原恵です。
皆はめぐって呼ぶんですよ
……あと、軌条透さんのことはなんて呼べばよろしいですか?」


そう問うと


「…………うーん?
なんでも良いよ
とおるでも………
なんでも」


そう言いながら笑っている彼を見て


「とおる………さん………」


そう言うと
目が合い二人で笑った


思ったより寒かった海辺は
思った通り綺麗で、人はいなかった


昼間はお仕事で海には来れない私は、
生まれて初めて海に触れた


思ったより冷たい水に私は触れた足を引っ込めた
それと同時にバランスを崩してしまった