男親と子供
お父さんの方が、優しく私にこう聞いた
「ここのお嬢さん?
中学生かな?
うちのこいつも中学一年生でね」
なんて、大笑いするその人の名前は、
常連さんの『軌条 怜』だった
女将さんは久しぶりです
なんて言って話し込んでいた
私は、軌条さんの後ろに隠れるように立っていた男の子に目を向けた
その子もこちらを見ていた
「こんにちは
私も中学一年生なんですよ」
そう言い笑いかけると
そう、
とだけ言って部屋へと早足に向かった
ま、別にいっか
そう思って持ち場に戻って、
いつものように休憩時間中テーブルで勉強をしていると
あまり客が来ないところにも関わらず
軌条さんが来て
「あぁ、
めぐむちゃん?」
そう声をかけられて顔を上げた
「どうかされましたか?」
そう言うと
「いや、特にはね
うちの透も勉強してるんだよ
あ、めぐむちゃん頭良いんだよね?
透に勉強教えてくれないかな?」
そう言われて
別にいいですけど……
と、言うと
満面の笑顔でありがとう
そう言われて
去ってゆく軌条さんの後ろ姿を見送った

