そうこうしているうちに、伊織くんは卒業式を迎えた。
伊織くんはかっこいいから、きっと大学に行ってもモテモテだろうな~。
これからは、毎日会えなくなってしまう。
そんなことを考えていると、涙が溢れてきた。
泣いてる姿を見られたら、きっと重い女だって思われちゃう!!
そう思って、体育館裏へ隠れた。
体育座りをして、膝小僧におでこを乗せる。
懐かしいな~、体育館。
放課後に伊織くんのバレーの練習を見に行ったりした思い出の場所。
涙がとまらない。
「……ヒック…い、おりくん…」
最後に会いたかったな~。
伊織くんは、東京の大学に進学するから簡単には会えなくなってしまう。
「…泣くなよ。」
幻聴がしたんだと思った。
だって、大好きな人の声が聞こえたから。
顔を上げると、そこには伊織くんがいた。
伊織くんの姿を見たら、また涙が溢れてきた。
泣いてる姿なんて見せられない。
つい俯いてしまう。
「…そんなに離れたくない?」
伊織くんが意外なことを聞いてきて、びっくりしたけど私は、頷いた。
「……待ってるから、追いかけて来いよ」
らしくないことを言ってくる伊織くんに驚いて顔をあげた。
すると、伊織くんのきれいな顔が近づいてきた。
…ちゅっ。
可愛い音が聞こえた。
え、?
ほっぺたにキスされたぁぁあ!!??
「…もう泣くな」
ちょっとだけ、伊織くんが照れてるように見えたのは気のせいだったのかもしれない。
でも、すごくすごく嬉しかった。

