部屋の掃除をして、自分の荷物をまとめた。




市役所でもらってきた『離婚届』。



震える手で自分の欄に名前を書いて印鑑も押した。



その間も涙が溢れて止まらなかった。




ダイニングテーブルに、離婚届と手紙と印鑑を置いた。





それと結婚指輪。






伊織くんはその指にはめたことは一度もないけれど、私は大切にしていた。



私の指から一度も外されたことのないそれを外し、テーブルの上に置いた。





部屋を見渡す。




いつもあそこのソファーで伊織くんの帰りを待ち続けたな~。


キッチンに立って私にご飯を作ってくれたな~。


初めてダブルベッドで寝た時、隣に伊織くんがいることにすごく緊張したな〜。





少ないけど私にとってはどれも大切な思い出。




「ありがとう」



そう部屋につぶやき、わたしはこの家を後にした。