「じゃあ、行ってくる」 玄関で彼が言う。 『妻』として最後の仕事。 『夫』を送り出す。 「いってらっしゃい」 ごく自然に微笑めた。 「あ!ねぇ、ちょっとしゃがんで?」 身長の高い伊織くんにお願いをした。 「えっ!?こう?」 しゃがんだ伊織くんの顔が私の目の前にある。 、そっと伊織くんにキスした。 これで最後だから許して……。 初めて自分から伊織くんに触れた。 こうやって唇にキスをするのは結婚式以来だね。 2回目をこんな形でするなんて思ってなかった。