久しぶりに会う伊織くんは、変わってなかった。
でも少しだけ、大人っぽくなっててちょっと緊張した。
「…あのさ、みおり…」
自分からは滅多に話しかけてこない伊織くんが私に話しかけてきた。
「母親がお見合いしろってうるさくてさ、困ってるんだ……。付き合ってる人がいるって言っても信じてくれなくて……。だから…その…」
伊織くんは、ポケットをごそごそとあさった。
「…俺と結婚してくんね??」
パカッと小さな箱を開いた。
キラキラ輝くかわいい指輪がおさまっている。
……………でも、かなり軽くない!?
『ちょっと買い物付き合ってくんね?』的な軽いノリ!!!!
お見合いをすすめられて、困ってる伊織くんを助けるための人助け的結婚。
でも、伊織くんと一緒ならどうでもよかった。
あの時の私は、まわりが見えないほど伊織くんに溺れていたから。
「…うんっ」
返事をすると、伊織くんはほんの少し笑って指輪を薬指にはめてくれた。
軽くぎゅって手を握ってくれた。

