「おーにぃーいーちゃん!何ボケっとしてんのー?」

俺の肩をバシバシ叩いてくる女

長い黒髪で、いかにもお淑やかそうなのに結構おしゃべりな、宮野結愛(みやの ゆあ)
俺の妹

「別に…」

「あ、もしかしてまた告られたの?」

俺の顔を覗き込んで晩ご飯のコロッケを頬張る

「結愛ちゃんってほんとに伊澄好きだよね」

これまた晩ご飯のコロッケを頬張りながら彪が言う

「べっ、別に…お兄ちゃんそろそろ誰かと付き合えばいいのに…とか思っただけ!お、お兄ちゃんのことなんか好きじゃないもん!」

いつもより早口でまくし立てるように結愛が叫ぶ

それを見ていた母が

「結愛、彪君がいるのに…もっとお淑やかにしなさい」

それを聞いて結愛が、口の周りについたソースと、コロッケの衣をティッシュで拭き取る
そしておとなしく席に着く

母は強し、だな

「………あ、そうだ母さん」

「なあに?伊澄」

優しげな笑顔をこちらに向けられる

「今年の祭り、一人で行っていい?」

ご飯を口にいれてもごもごしていると

「何かあったの?別にいいけど」

「別に…なんとなくだよ、なんとなく」

サラダを口に頬張って飲み込むと

「お!?なんだよ伊澄、居ないとかいいながら実はいるんじゃねえかよ!」

机から身を乗り出して真っ赤になりながら俺の肩を掴んでぐらぐら揺さぶってくる

「ちょっ、か、彪!やめっ、」

頭の中がグラグラしてすっごく気持ち悪い

「あ、すまん」

パッと肩を離される

「気持ち悪い…コロッケ吐きそう…」

口を手で押さえてつぶやくと

「お兄ちゃん、きもっ…」

「伊澄…それはひかれるぞ…」

と、二人同時に引かれる

俺だって気持ち悪いと思うよ…

でも、でもな!

「こうなったのお前のせいだからな!か…おぇ…」

「俺の名前いいながら吐きそうになるなよ!」

「も、むり…死にそう…」

「お兄ちゃぁぁぁぁん!?」

妹の叫び声を最後に気を失った