それから数週間、毎日のように野球部を眺めていた。

私は吹奏楽部に所属しており、その教室からは野球部が真下に見える。
言わばベストポジション。

今はまだ準備中みたいで、1年生しかいない。

「れーいっ。また野球部見てんの?」

後ろから親友の望月 咲夜(もちづき さよ)に声をかけられる。

「まぁね。野球って面白いじゃん?」

そう良いわけをする。

「とか言って実は気になる人がいるんでしょ~?」

半分正解、半分間違い。
気にはなるけど好きってわけじゃない。

「さあ~?」

私はその質問を軽く受け流す。

すると

「なになに?なんの話っ?」

と言って伊東 千鶴(いとう ちずる)が話に入ってくる。

「ちょっとちーちゃん!莉依、野球部に好きな人がいるんだって!」

「ちょ、違うから!」

慌てて否定するも、逆に怪しいと疑われてしまう。