PM 18:30 僕らの時間


「慶!もう監督きてんぞ!今すぐ行かないとグラウンド10周だって!行くぞ!」

私の言葉を遮るように、田中と同じ野球部の男子が入ってくる。

「まじか!?ご、ごめん山下。今日、帰りいつものとこで待ってる。」

田中はそう言って教室から出ていった。

待ってる…かぁ。

その言い方が付き合ってたときと変わってなくて、なんだか嬉しくて、だけど切なくて、さっきまで田中がいた場所をただ見つめていた。



しばらくして私も部室へ向かう。

いつもと変わらない音、景色、なのにどうしてこんなに鮮やかに色づいて見えるんだろう。

「莉依!どうだった…?」

部室に入った私を見つけた咲夜が駆け寄ってくる。

「途中で田中呼ばれちゃって…言えなかった……でもいつものとこで待ってるって…」

私がそう言うと咲夜は優しく笑って「よかったね」って言った。












部活中は気が気じゃなくていつの間にか終わっていた。



「じゃあ、咲夜また明日。」

「うん、頑張れ!」

部活を出て外を見るともう真っ暗だった。

もう野球部終わってるよね…

そう考えると早足になる。

昇降口につくと、付き合っていた頃と全く同じ場所にあの頃よりも少し背の高い田中が立っていた。