部屋の外の世界を僕は知らない。
土の中は気持ちいいのだろうか。
外の世界は何色なのだろうか。
そんなことを考えている今、兄と召使いは部屋の外で話している。
僕はずっとこの部屋にいる。
だから知らないものが多かった。
特に気になっていたのは『タバコ』というものだ。
二人が話しているのも『タバコ』のことだった。
どんなものか気になって尋ねると二人はただ一言『毒だよ』と答えた。よく分からないけど二人がいうならそうなのだろう。
しばらくして召使いが去り、外には兄だけになった。
僕は何故か孤独を感じてめくれた壁の隙間から手を出した。そうすると兄は僕の手に指を一本引っ掛けた。見えないけれど僕はそう感じた。
兄の指は冷たかった。でも安心感があった。

「眠れないのか?」

そう言った兄の声はいつもの感情のない声とは違い、どこか優しかった。