次の日、食事の時間に僕は飲み物と肉のことを召使いに尋ねると飲み物は黒スグリを使ったものと返ってきた。
それから今度は兄が来た。
兄も召使いも二人して『どこか変わったところはないか』と訊いてくる。

『変わった』と答えればこの部屋から出してくれるのだろうか。

その後に兄は何故か『蛙と鼠のどちらが好きか』と訊いてきた。
質問の意図を訊いても同じことを繰り返すだけで何も教えてはくれない。
仕方ないから鼠と答えれば『今まで通りで大丈夫だな』と返された。蛙と答えていれば僕はどうなっていたのだろうか。
今更だが僕は兄と召使いの顔を知らない。分かるのは二人の声は低い位置から聞こえるということだけだった。物心ついた頃には僕はこの部屋に閉じ込められていた。
最初は怖かった。でももう慣れてしまった。何より閉じ込められてはいるが生活には何の不自由もない。今はただ、少しだけ退屈なだけだ。