暗く冷たい部屋で目を覚ました。
誰の声が聞こえることもない。ただ自分の呼吸以外に音もなく、そしてまた心癒えることもなく、時だけが過ぎてゆくこの部屋で。
ここはいつもこうだ。失うものなどないというのに何故か喪失感を起こさせる。
ガチャガチャガチャ。ドアノブを捻ってみたがやはりいつものごとく開くことはない。
この行為は毎日習慣的にやっていることだ。
特に何を期待しているわけでもないが。
カタッ。ドアノブを握る僕の後ろで物音がした。振り返ると壁の一部分がこちらにめくれ、その上に薄く切られた肉の乗った皿とコップが置かれている。
どういうわけか部屋の外も薄暗く、そのせいで皿の肉やコップの中の液体の色までは分からない。かろうじて分かるのは液体は濃い色をしているということだけだ。
喉が乾いていたのでいつものようにコップの液体を飲む。相変わらず妙な味だったが喉の乾きを潤してくれた。
肉の方はいつもと変わらず美味しかった。