「ふっ、我々に利用されていることにも気付かないとはな」

「まあ、いいじゃない。どんどん改良して、強くなってもらえば、私達は何もしなくても、闘神達を倒してくれるかもしれないし」


馬鹿にしたような男の声の後、愉しそうな女の声がする。


「ああ。奴等がいなくなれば、一気に我等の計画を進められる。《あの方》を迎える準備ができる」

「ふふ、そうね」

「でもさ、窮姫。このまま、あの男を強くしていったら、他の奴等は必要ないんじゃない?」

「いえ、まだ利用価値はあるわ」

「そうだな。存分に利用させてもらおうじゃないか。・・・最後までな」

「ふふ、そう。実験の最後に、ね」

「!!」


その言葉に火焔は息をのむ。


「!誰だ?」


気配がもれてしまったのか、中から声がする。

今見付かってはいけない気がして、火焔は再び気配を消すと、素早くその場を離れた。


(これを渡す訳にはいかないよな)


部屋に戻ってきてから、窮姫に渡さなかった紙の束を見る。

そのまま、手の方に意識を集中させると、紙の束は一瞬の内に燃えて消えた。

その滓を手から払い、火焔は部屋の中にあったものを纏め始める。

暫くして、部屋の中を片付けると、最小限の荷物を持って、火焔は部屋を出た。

もう、ここへ戻ってくるつもりはなかった。