「・・・幼い頃、俺と火焔はあまり仲がよくなかったんだ。会っては喧嘩し、兄上によく叱られていた」

「うん。少しだけ、夜天くんと雷牙くんから聞いたことあるよ。何があったのかはわからないけど、急に仲良くなっていたって」

「・・・まあ、それも喧嘩が切っ掛けだったんだよ。口ではなく、実力行使の本気のな」

「原因は?」


花音が聞くと、風夜は首を横に振った。


「・・・もう覚えてない。だが、それで漸くわかりあえたというか、お互いを認めあったんだよな」

「そういうところが、男の子って感じだね」


言って苦笑した風夜に、花音はくすりと笑ってそう返した。


「それで、その時に約束したんだよ。・・・もし、どちらかが道を間違えることがあったら、もう片方がそれを正すってな。言葉だけで無理なら、どんな方法を使ってでも止めるって」

「・・・・・・」

「あいつは、自国や民を守る為に俺達と道を違えた。だが、度重なる実験、あれに加担しているのを正しいことだとは俺には思えない。それに、今回の白鬼の件と、俺達がいなかった時の光の街の件・・・、恐らく神蘭達も後手に回るのはやめるだろう。なら、全面衝突になるのも時間の問題だ」

「・・・そうかもね」

「・・・もし、そうなっても、あいつらが戻ってこなければ、火焔達も敵として処理されるだろ。それなら」


そこで、風夜は一度言葉を止める。


「・・・・・・それなら、火焔だけは・・・、俺が手を下す。・・・あいつを止められなかった、連れ戻せなかったせめてもの償いとして・・・」


そう言った風夜の表情は、何処か泣き出しそうにも見えて、花音はただそうならないことを祈った。