「・・・姉さんは、いないわ」

「えっ?」

「・・・数百年前にも、一度大きな戦いがあったのは知ってる?その時に姉さんは、戦いを止めようとして、・・・窮姫という女に殺されたわ」

「「!!」」

「だからね、私は彼女達の計画に協力するつもりはないの。あの人達に協力するくらいなら、私は姉さんに所縁のある風の国の王族のいる方に協力するわ」

「でも」

「大丈夫。今、魔族側も一枚岩ではないの。それに闘神達が動いてるなら、此方を気にしてはいないはずよ。・・・それで、貴方はどちらを望むのかしら?」


心配して声を上げた花音に、片目を瞑ってみせ、風夜に問い掛ける。


「どちらを望むって」

「選択肢は二つ。一つは、魔族の血を貴方の中から、完全に消す。二つ目は、その血と力を受け入れ、自分の物とする。さぁ、どちら?」


沙羅に聞かれ、風夜は黙りこんだ。


「因みに参考までに言っておくと、一つ目の方がずっと簡単よ」

「そうなんですか?」


考えている風夜の代わりに花音は聞き返す。


「ええ、だって薬を飲めばいいだけだもの。それだけで、魔族の血はなくなり、ただの人に戻れるわ」

「でも、その薬が凄く苦いうえに、暫く身体中に激痛がはしるって話だよねー」

「・・・二つ目は?」

「此方は大変よ。魔族としての自分と戦って、勝たないといけないんだから」

「負けたら、逆に取り込まれちゃうんだって。まぁ、勝っても負けても魔族に変わりはないんだけど」

「うぅっ」


沙羅に付け足すように言う瑠璃に、花音は思わず頭を抱えた。

「って、花音、何でお前がそんなに悩んでるんだよ」

「だって・・・」

「それで、どうするか決まった?」

「俺は・・・」


風夜が口を開いたその時、家の扉が物凄い勢いで開き、誰かが飛び込んできた。


「姉さん!大変だ!」


聞こえた声に、全員が扉の方を見る。

そこには、ぐったりとしている紅と蒼の髪をした二人の幼い少年を背負った少年が息を切らして立っていた。