次の日、花音は朝早くから弓の練習をしていた。

コツが掴めたからか矢を作るのは簡単で、的に当てることだけに集中する。

何本かの矢が連続で当たった時、拍手が聞こえ、ニコニコと笑った神麗が近付いてきた。


「昨日の今日で此処まで上達するなんて、凄いわ」

「そ、そうですか?」

「ええ。そうだわ。彼も帰ってきたことだし、一度くらい試してみる?」

「えっ?」

「試すって何をだ?」


神麗の言葉になんのことかわからずにいると、それまで見学していた風夜が聞き返した。


「いいから、貴方、この部分に力を送ってみて」

「?」


首を傾げたまま、言われたように風夜が弓の水晶の部分へ手を翳す。

すると、水晶は淡い白い光を放ち始めた。

「さあ、構えてみて。力は使わなくていいから」

「こうですか?」


言われた通り、光の矢を作らずに構えると、風だからか目には見えないが、矢が出来ているような感触がある。

それを射ってみると、弓から矢が放たれたような感覚の後、数メートル先にあった的が粉々に砕けるのが見えた。


「わわっ!?」

「さすが風属性、スピードと切れの良さは一番ね」

「だが、これって効率悪くないか?」


すぐに何を試したのかわかったらしい風夜が言う。


「そうね。その点では改良が必要かしら?まぁ、でもそれは後にしましょう。今はそれで我慢してもらえる?」

「はい。・・・今はこれで十分ですから」


力を借りるにも、今は風夜しかいない。

だから、このままでもよかった。