「いけない!花音、彼を止めて!」

「えっ?」


意識が戻ったらしい沙羅の声が聞こえてくる。


「止めるって・・・、どうやって・・・」


花音一人で今の状態の風夜を止められるとは思わなくて、聞き返す。


「宝珠の力を借りれば、出来る筈。今、これ以上魔族の状態にしておけば、取り返しがつかなくなるかもしれないわ。急いで!」


その言葉に、花音は宝珠を握り締めた。

風夜を傷付けずに止める方法を考えて、沙羅が使った魔力の鎖を思い出し、それを自分の能力に置き換えてイメージする。


(ごめん!風夜)


光の鎖で風夜の動きを止め、僅かに浄化の力も流す。


「うぐっ・・・」


鎖から逃れようともがく風夜の様子を見ながら、拘束する力と浄化の力を強めていく。

段々と抵抗する力がなくなってきた風夜から鎖から解放すると、同時に彼はその場に倒れこむ。


「朔耶!」

「わかってるよ、姉さん!」


立ち上がり答えた朔耶の身体が光り出し、その姿を巨大な黒い狐に変わっていく。


「乗れ!」


花音がその背に乗るのと同時に、沙羅が魔力の鎖で風夜、紅牙、蒼牙を引っ張りあげ、落ちないように固定する。

全員を乗せたのを確認し、走り出した朔耶を追ってくる気配はなく、あっというまに研究所は遠ざかっていった。