ひとひらの恋物語




私の右の手のひらが暖かく包まれた。



ーーこんなに豆のある手は、左之さんだ





「俺も...、好きだったぜ...、彩芽のこと」



こんな時に心が結ばれちゃうなんて、切ないな、私は思った。




「この...、たたか...いが...おわっ...て...落ち...つい...たら...。


結婚...、しよう」


まさかの死に際でのプロポーズ。



「う...ん。


ずっ...と、一緒...だよ」



「ああ」と笑顔になった左之さんは目を閉じた。



それから再び目を開けることもなく、隣から呼吸をする音も聞こえなくなっていた。




そして、私もなんとかつなぎとめていた意識を手放した。