ーーーーー「次は、上野桜木、寛永寺根本中堂前でございます。」
そのバスのアナウンスを聞いて彩奈が嬉しそうにボタンを押した。
彩奈はバスのボタンを押すのが好きなのだ。
バス停から降りると、初夏の爽やかな風がわたし達のセーラー服のタイを揺らした。
そして、カバンについている鈴が小さく音を立てた。
ーーーーーチリン
どこか懐かしい音だった。
そして、驚いたことに鈴は左之さんがいつかの祇園祭で買ってくれたものだったのだ。
「そういえば彩芽、スクバに鈴なんてつけてたっけ?どうしたの?」
その優衣から質問に私は答えた。
「大切な人がくれたんだ」
顔がすこし熱くなった気がした。
「おおっと! 彩芽が照れてる!!」
「ほんとだほんとだー! 今夜は彩芽の恋バナだね!」
「やめてよー!」
彩奈と紗綾の言葉に照れながらも笑う。



