仁の決勝の日。
日焼け止めはしっかり塗った。
応援グッズもチア部から借りている。
よし、完璧だ。
「仁!!ファイトー!!」
バッターボックスに立つ仁に声援を送る。
ブラスバンドやファンクラブの子の黄色い声で私の声なんか聞こえないだろうけど。
試合は9回裏、3対1
私たちの学校が2点を追っている。
9番と1番がヒットで出塁するも、2番、3番が空振り三振で終わり、ツーアウト1塁2塁で迎えたバッターは、仁。
あと一人おさえれば優勝の相手チームのスタンドでは、あと一人コールが響く。
仁、頑張って…!
初球、相手ピッチャーの切れ味の良いストレートが決まり、ストライク。
2球目。
相手の球に食いつくもファール
ツーストライク
あと一人コールからあと一球コールに変わる
ピッチャーが構えて、ボールを投げる
カンッ!!
乾いた音が球場に響く
その場の時間が止まったようだった
球場に大きなどよめきと歓声が上がった
「やった、やった…!!」
逆転サヨナラホームランだ
ホームベースを踏む仁
「仁!!やったね!!勝ったよ!!!」
そんな私の声が届いたのか
仁は私に向かって大きく手を振った
「仁…!!」
溢れる涙が止まらなかった
私は負けたけど、それを仁が取り返してくれたような気がして
「仁、ありがと」
「真理、帰るぞ!!」
「はーい」
試合後、打ち上げをすることもなく、野球部は解散
私も仁と帰ることになった
「仁、かっこよかった!!私感動した」
また涙が出てくる
「なんで真理が泣くんだよ」
動揺しながらも肩をさすってくれる仁。
「なんかね、私の負けを取り返してくれたような気がして…」
へへ、と微笑むと
「…俺も、真理の応援があったから打てた」
「え?」
「真理の声だけが真っすぐ俺に届いた」
「ありがとう、真理」
私はまた涙が溢れた
「お、おい、なんで泣くんだよ」
さらに動揺する仁
「うう、だって…」
「…ちょっと」
そう言って仁は私の腕を引っ張って、人目のつかない高架下に連れていく
「泣きたいなら、いくらでも泣け。俺がついてる」
そのまま仁は私を引き寄せて抱きしめた

