ここ数日は毎日雨だ。
部活動も屋内練習するにしても内容が限られてくる。
あと1ヶ月で大会なのにコートが使えないのはかなり痛い。
しかももう試験一週間前に入るから練習じたいができなくなる。
「というわけで、明日から期末考査だ。推薦入試を考えている者は、評定に関わってくるので手を抜かないように。それ以外の者もしっかり勉強すること。以上だ」
担任の言葉に、雨よりも鬱陶しい顔をした生徒たちがだらだらした返事をする。
「広田ー、帰ろー」
「おう!!愛、今日はどこ行く?」
「んー、ファミレス行こー」
「よっし」
「真理も行くよね?」
「あー、ごめん。私パス」
「どうしてー?」
「勉強するわ」
「ガーン。佐山から勉強という言葉が出るなんて」
「ちょっと黙れ広田」
「そっかー。勉強頑張ってね」
「ちぇ、つれねーやつ。おい、仁!!仁はファミレス行く?」
「いや、俺も残って勉強する」
「仁まで勉強かよ…」
ブツブツ言いながら帰る準備をする広田。
「仕方ないよ。じゃあねー」
「バイバイ」
教室を出る愛と広田に手を振って見送る。
「私は図書室行くけど、仁はどこで勉強する?」
「俺も図書室行く」
「じゃあ一緒に行こ」
そう。
もう受験生だ。
私も勉強しないと。
愛はふわふわしてるけど、成績はかなり良い。
広田はそんな愛に教えてもらうようになってから高得点を取るようになった。
仁は真面目にこつこつ勉強してきたから学内上位だ。
私はというと。
広田と同じくらいだ。
それはつまり、平均より上。
学年100位以内くらい。
でも、それじゃダメなんだ。
私はなんとしても仁と同じ大学に行きたい。
以前仁から聞いた大学は、今の私の成績じゃ全然足りないところだった。
それから私は勉強に励むようになった。
仁と一緒だからなんて理由にならないけど。
ちゃんとしっかりした理由もあるんだよ?
行きたい学部が見つかったし。
そこに仁がいたら…なんてね。
「真理、そろそろ…」
「って寝てんじゃん。おい、真理」
「ったく、幸せそうな顔して…真理、真理」
あれ、誰か私のこと揺らしてる?
大好きな仁の声が聞こえる…
「ったく、俺の気も知らないで…真理!!真理!!」
「うーん…」
目を開けると。
「うへ、仁!?」
仁の顔が目の前にあった。
「よく寝てたな。そろそろ閉館だから帰るぞ」
「え、寝顔見たの!?えー」
「寝る方が悪い。ほら、帰るぞ」
「はーい」
正面玄関を出ると、まだ雨はやんでいなかった。
傘をさして仁と並んで歩く。
「仁?」
「ん?」
「あのさー」
「…」
「大学ってさ、やっぱり前言ってたところ?」
「おう」
「そっか…」
信号が赤に変わる。
「私さー」
バサッ
「え?じ、仁?」
仁が自分の傘を閉じて私の傘に入ってきた。
「雨で声が聞こえない」
私の手から傘を取り上げる仁。
これって相合傘ですよね?
肩が触れ合う。
それだけ近くにいるんだ…
「で、なんて?」
「え、あ、ああ。大学、なんだけどさ」
「おう」
「私も、仁と同じところ目指そっかなーって」
「そうか…」
「うん」
「一緒に頑張ろうな、真理」
私の頭をぐしゃぐしゃ撫でる仁。
「うん、頑張るよ」
そうだよ。
頑張らないと。
肩が濡れるけど、そんな冷たさも気にならないくらい私の心はあたたかかった。

