キスをしたら、わたしの手が掴まれて…
そのままぐるんと視界が回転した。
ソファに押し倒されたって理解するのには、少し時間がかかった。
わたしを見下ろすその顔は、どっちかと言えば無表情で。
そのまましばらく沈黙が続いた。
「誘惑しすぎ」
ポツリと聞こえた言葉と、溜息。
解放されたわたしの手。
背中を向けられて、なんだか悲しくなる。
「何で止めたの?
彼女に悪い?」
「…彼女はいない。
彼女いると思うならそういうことするなよ」
「いないんでしょ?」
「いない」
きっぱり言われ、一瞬喜んだ自分。
だけど、何が嬉しいのか分からない。