体育館に行くと、百人以上の生徒が浩
を待っていた。

壁側には教師の姿もあった。

放送部の友達とチェックをしてから、
浩はマイクを持った。

「ええ、家に帰っても暴力を振るう
父親が待っていて行き場のない十代を
送っている皆さんこんにちは。

絶望と混沌の世界へようこそ!

『ワルトハイム』がお送りします繰上
げ出場決定ソング『夢はかなわない』
をお聞き下さい」

コンテストと同じ音量にして始めたので、
大部分の生徒達は驚いて耳を塞いだ。

曲が進むに連れてリズムに乗る生徒も
いたが、大部分が立ち尽くしたままの
無反応の状態で演奏は終わった。

拍手もまばらの中、浩は頭を下げて、
機材をしまい始めると、生徒達は普段
聞いているJ-POPとはあまりにも
違うジャンルだったので戸惑ったまま
体育館から出て行った。