浩は今がその瞬間だと思い、優衣を
自分の方へと引き寄せた。

「・・・!」

優衣もまたその瞬間が来たと期待と
不安の混じった表情で近づいたが、
自分の口から出た言葉は不安の方を
咄嗟に選んでしまったのだ。

「あっ、他にも何か作らなきゃ
なんないから・・・」

優衣は浩の手を振りほどくと、
自分の部屋へ走っていった。

(馬鹿!今、浩君とキスするチャンス
だったでしょう!

私、なんてこと言っちゃったの!)

優衣は後悔して何度も閉じてしまった
自分の部屋のドアを見つめた。

浩はその場で立ち尽くした。

(今がそのタイミングだと思ったのに
なあ・・・違ったのかなあ・・・)