―数日後、十六夜の家にて
(十六夜side)




「なんなんだよ!!千歳のやつっ!!」




オレは千歳とケンカしてから一度も口を利いていない


いや、オレが利いていないんじゃなくて、千歳に無視をされているだけなんだ


勿論、この前のように一緒に帰る日は沢山あった

むしろ増えたとオレは思う


みんなもきっと仲直りして貰いたくて、増やしているのだろう

謝りやすくなるような雰囲気にしたり、わざとオレと千歳を二人きりにしたり…


あんな騒がしいやつらでも空気は読めるし、気も利く

その上、全員優しい

みんななりに考えてくれているんだ


でも、どうしても謝れない

オレが悪いことぐらい、自分でも分かる


だけど千歳がオレの話を聞いてくれない以上、無理だろう

そんなことを考えていると、不意にオレの頭上から声がした




「なに、また千歳ちゃんとケンカしたの?」




「あ、姉ちゃん」




オレの姉、望月夜空(もちづき よぞら)


THE☆女子高校生と言う雰囲気を漂わせる高二の姉だ





「オレが悪いのは分かってるんだけどさ…」





「じゃあ、とっとと謝りなさいよ」





「でも話を聞いてくれないんだよ」





「……あのね、十六夜」




そこまで姉ちゃんは言うと、少し間を開けてから続けた





「確かにアンタたちは幼馴染みで、お互いのことは言葉にしなくても分かるぐらいかもね。でも大切なこと程、言葉にしないと分からないことだってあるのよ」




『大切なこと程、言葉にしないと分からない』




その言葉がオレの胸に刺さった


そもそも、オレたちはケンカしやすいタイプだ

小学生のころなんて毎日のようにケンカをしていた


その度に謝って仲直りしてきた


そして、お互いの気持ちをぶつけ合った


千歳は幼馴染みで大切な人だからこそ、自分の本当の気持ちをぶつけられるんだ


だから絶対失いたくない



今からでも遅くない


謝りに行こう

……そして、今気付いた気持ちもしっかり伝えよう




「姉ちゃん、ありがとう!!オレ、今から千歳のところ行ってくる!!」




「うん、いってらっしゃい」




持つべきものは良き姉だ



オレは優しき姉に感謝しながら、リビングを飛び出し、玄関に向かった



千歳の家はオレの家の隣だ


物凄く近いため、いつも遊びに行っていた



だけど、今日みたいに謝るためだけに行くというのは今日が始めてだ



……気持ち、伝われば良いな