「倉橋さん、大地くんが怒ってるわよ。」
〝大地〟
そう、それが彼の名前。
「傷を見られたのは仕方ないとはいえ、自分から話したんだもん。……大地くんにやられたって。大地くん、物凄くカンカンだったわよ?」
どこから見ていたのかは分からないけど。
大河内さんは全てを知っているようだった。
……当たり前だよね。
大河内さんは大ちゃんの言うことなら何でも聞く、私の見張り役で。
その命令を全うする為なら、手段は惜しまない人だもん……。
「今日は4丁目だって。よかったわね、倉橋さん。貴方の家も4丁目だから近いじゃない。」
それだけを言い残した大河内さんは満足そうに。
足を弾ませて、私の前から立ち去った。


