side 倉橋しずく
――知られたくなかった。
和泉くんだけには、こんな傷。
見られたくなかった。
「うぅっ、ぐす……っひ、……っ。」
この傷は、彼の愛情。
私を愛してくれてるからこそ、彼は私を傷つける。
その言葉に偽りは無いけど。
この愛情表現が普通ではないこと。
私は知ってる。
知ってても、彼に愛されているという証を拒むことなんて、出来なかった。
私は本当の愛なんて、知らないから。
彼以外からの愛情なんて、私は貰ったことがないから。
どんな形でも。
彼に愛されているという事実が、嬉しくて仕方なかったんだ。
……例えそれが、跡に残るほどの暴力だとしても。


