こんなの、らしくないんだけど。
さすがにあんなに酷い傷を目にした今。
目の前で顔を伏せる倉橋を、嘘無しで心配している自分がいた。
「本当、だけど……大丈夫。傷は直ぐ治るし……。それに……。」
「これは、彼の愛情だから……。」
頭がショートするというのは、まさにこういうこと。
傷は物凄く痛そうなのに、その傷をスカートの上から撫でて。
幸せそうに微笑む倉橋に、目が点となった。
それでもやっぱり痛むのか。
ほんの少しだけ顔をしかめて。
気まずそうに、校舎の中へと消えていった。
「……何だよ、それ。」
5限目本鈴のチャイムが鳴っても。
僕は、動けなかった。
目の前では見覚えのある携帯が、音を鳴らして震えていた。


