【完】一粒の雫がこぼれおちて。






いってらっしゃいのキスは、唇じゃなくてお腹。



……妊娠するまでは気付かなかったけど、絶対大くん親バカになる。


うん、これ絶対、分かる。



「……とりあえず、洗濯物でもしよーっと。」





「っ……た、い……。」



午前11時、大くんが出勤してから5時間。



「いたっ、い……!」



お腹が急に、痛み始めた。



「で、んわ……。」



電話をしようと携帯を持ったのはいいけど、痛みで画面が見えない……。



「たす、けて……っ、痛……!」



無我夢中で押したボタン。



涙が目を覆っていて、どこにかけているのか分からない。


だけど。



「何、里沙。」



素っ気ない話し方と聞き慣れた声に、自分が誰に電話をかけたのか、すぐに分かった。