【完】一粒の雫がこぼれおちて。






こんな人前で……っ。


いつもはバカバカしいって言って、絶対しないのに……。



なんで……?



「……しずくが悪い。こんな、いつか渡した僕のコートを着て、デートに来るなんて……。」



そこまで言われて、ようやく気付いた。



蒼空はじっと、私じゃなくて私の着ているコートを見ている。



……覚えてて、くれた。



「しずくは分かってない。」


「自分の服を彼女が着ているってことが、どれだけ、相手にとって嬉しいことか。」



コートから私にへと移った、眼鏡越しのその真っ直ぐな視線に。


心臓が、ドクンと高鳴る。



「……蒼空も、嬉しい……?」



「…………嬉しすぎて、今にも倒れそう……。」