【完】一粒の雫がこぼれおちて。






こんな私だから、愛想を尽かされたんじゃないかと。


その溜息で、私の体は更に強張る。



「本当、バカ。……そんなの、当たり前じゃん。はじめて……なんでしょ?」



涙が零れそうなのを我慢して、小さく頷く。



すると頭から手が離れて、今度はまた、その手に手を取られる。


でも繋ぐんじゃなくて、手が導かれる感じで……。



引かれて触れた先は、蒼空の胸。


当たり前だけどそこは固い胸板で、柔らかさなんて全然無くて。



……服の上からでも分かるぐらい……。


「ドキドキ、してる……。」



バクバクバクって、心臓が早い。



「……分かる?」


「うん……。」



「僕だってそういうの、はじめてだし。……怖いのは、しずくと一緒だから……。」



私と、一緒……。