【完】一粒の雫がこぼれおちて。






「……何考えてるの、バカ。」


「ほぇっ……?」



繋いでいた手が、突如離された。



「時間的にはちょっと早いけど、家で夕飯とケーキ食べようかってだけだし。…………そもそも、怯えてる彼女を無理矢理抱く趣味とか無いから。」



蒼空の手が私の頭に触れ、そのまま軽く撫でられる。



そこでようやく、私は自分が震えてることに気付いた。


手はカタカタと、足はプルプルと震えていて。


それは明らかに、寒さから来る震えとは違って。



「ごっ、め……っ。」



……私、平気と思ったのに。


蒼空となら大丈夫って……。



……けど、やっぱり……。


「こわい……っ。」



私がそう呟けば、蒼空は呆れたように溜息を吐いた。