【完】一粒の雫がこぼれおちて。






そういえば最近、蒼空を〝アイス系男子〟と呼ぶ人も少なくなった。


逆によく聞くようになったのは、〝和泉〟とか〝蒼空くん〟とか、やけに馴れ馴れしい女の子の声。



もちろん。


蒼空の承諾も無しに下の名前で呼んだ子は、蒼空からキツイ言葉を受けていたけど。



「……いくら何でも、モテ過ぎだよ。」


「え? 今、何か言った?」


「なーにもー。」



今までずっと引かれていた手をぎゅっと握って、今度はその手を私が引いて歩き出した。



行き先は前々から聞いていたから、どこに行けばいいかなんて知ってる。


今日向かう場所、そこは……映画館。



「これこれ! 見たかったの!」


「へぇ……。面白そうだけど、わざわざ大金出してまで見る価値はなさそう。DVD出るまで待てないの?」


「待てない!!」


「……あっそ。」