番外編③
あの日のコートと、未来
side 倉橋しずく
「12月24日、予定空けておきなよ。」
蒼空にそう言われたのは、丁度1週間前のこと。
「え?」
「……何、僕とデートしたくないの?」
少し拗ねたように言う蒼空に慌てて首を振って、私は大きく頷いた。
「行きたい!!」
それから時が進むのは物凄く早くて、苦手な数学の時間も言葉通り、ほんの一瞬に感じるほど。
今日が来ることを、ずっと待ち侘びていた。
……きっと、いや絶対、蒼空は覚えてない。
4年前のあの日のこと。
私が家を飛び出して、蒼空の家の近く、1丁目で出会ったこと。
そのとき、薄着で弱っていた私に自分のコートを掛けてくれたこと。


