あの日から、もう数ヶ月。
季節はもうすぐ、冬になる。
「兄さん、バイト始めたんだって。」
「バイト? 不器用な大地くんが?」
「うん、駅前のファミレスで。しずくに振られて、少しは大人になったんじゃない?」
兄さんの働く姿が見たくて、この前ちょっと寄ってみたけど。
いつも自信満々な兄さんが、慣れないことにオドオドしてる姿を見るのは、何だかおかしかった。
ざまあみろ。
密かに思ったこと。
「そっか……バイトしてるんだ、大地くん。」
「……ってのは嘘。バイトは本当だけど、大人になったんじゃないよ。ていうか、何一つ変わってない。」
美衣奈が傷付くと分かっていて、こんなことを言う俺は相当性格が悪い。
だけど、仕方ない。
いつまでも美衣奈の心を縛る、兄さんが悪いんだ。


