秘密の猫



「ごきげんよう、舞香様」






学園内へ足を踏み入れると、
私が車から降りるのを待ち構えていたのか次から次へと聞こえてくるお嬢様方のご挨拶。






「ごきげんよう」






そっと近くにいた可愛らしい顔立ちのお嬢さんの耳元で、私は囁いた。







「だけどダメよ。私なんかより先にお姉様の方に挨拶しないと、」







そう言って私は少し後ろを優雅に歩く姉に目を向けた。
するとたちまち






「紫子(ゆかりこ)様!」






「ごきげんよう、紫子様。今日もとってもお美しいですわ」






あっという間に取り巻き達は紫子お姉様の方へと詰め寄った。
私の次に挨拶されたのが不服なのか、恐いくらいにこちらを見つめるお姉様。


そんな視線を流しながら、私は学園内へと足を進めた。