「話があるんだけど、いい?」



次の日、学校へ行くとすぐに清水に声をかけた。


郁都の姿は見当たらないから、多分屋上でサボりなんだろう。



ちょうど良かった。



清水はいつものふざけた感じではなく、これから何を言われるのかをわかっているような真剣な顔をしている。



「階段のところで話そっか」



そう言って歩き出した清水の後を追う。



アリスさんに睨まれたけど、今はそんなことはどうでも良かった。



穏やかな春の日だっていうのに、心にはどんより分厚い雲がかかって重い。



「小町のことだろ?」



階段に着くと、見透かしていたかのように先に口を開く清水。



聞きたいことはたくさんあるけど、聞いてしまったら取り返しがつかなくなりそうで怖い。



それに、郁都のことを清水の口から聞いてもいいものか迷うところがあるのも事実。


だけど、知りたいと思った。


昨日一晩眠れなくて、ずっとモヤモヤしたまま迎えた朝。


知らなきゃ多分、後悔する。



コクリと頷くと、清水は口元をフッと緩めて小さく息を吐いた。