家に着くと迷わず布団に潜って寝た。
起きたのは美結の着信があってから。
「もしもし?優愛今どこー?なんか様子変だったから、学校中理久と探したんだよー?」
美結、探してくれてたんだ。それだけで少し、救われた気がした。
「ん、家。今日はもう学校行かないから。心配かけてゴメン。」
美結はえー?と不満そうに叫んだあとに続けた、
「そういえば、透不機嫌だったけど、なんかあったの?」
…今聞いて欲しくないことをあえて聞いてくるのがこの子。
なんて答えていいのか、あたしは言葉を詰まらせた。
「透と優愛って、同じ中学でしょ?なんでそんなに仲悪いのー!」
美結が悪いわけではないのは十分わかってる。でも、耐えられなくて適当にあしらって電話をきった。
「美結、あたし今寝てたの。まだ寝るから、おやすみ。」
美結との電話が終わったあと、一人ぼっちの部屋の中で静かにため息をつく。
もう何も考えたくない。ん、寝よ。
そしてあたしはまた、夢の中へ入った。
…『なぁ、どういうことだよ!』
『私の方があんたより好き、だってさ?』
…『ねぇ?優愛。』…
バッ!
「ハァハァ…。」
嫌な夢。透の言葉で、またあの時のことを思い出した。
起き上がると外はもう暗い。
…こんなに寝てたのか。…外出ようかな。
嫌なことを思い出した時には忘れるのが一番得策。
気に入っているハニーブラウンの髪を軽く巻いて、適当な色のカラコンを入れる。
そして、学校にはしないメイク。
これだけでも印象は変わる。最後にお気に入りのミニワンピを着て外へ出た。
外へ出ると朝の赤い頭の男。
「あ!インターホン鳴らしても全然出ねぇから、今帰ろうかと思ってた。」
…帰ればよかったのに。その本心は心の片隅に隠して、丁度いいと思い直した。
「ごめんね。…お酒飲めるとこ、行きたいんだけど。」
その言葉だけで機嫌を直したのか、男は乗れ、とバイクを指差す。
そしてあたしたちは、夜の街へと出かけた。
