3階の廊下の一番奥の部屋。そこが透達がたまっている場所。






普通、たまり場と言ったら屋上じゃないの?って思うけど、屋上は一番強い族しか使ってはいけないルールらしく。






 この学校にはいくつもの族が混じっているため、屋上は暗黙の了解でどこの族も使っていないらしい。






 でも各族の中ではトップを狙っているという話。






 これは全部、美結の情報だからホントかどうかは知らないけど。






 空き教室まで行くと、元は白い所に赤いスプレーで落書きされているドアがあった。






 普通の人が見れば、近づきたくないような雰囲気。そこに女二人で入ろうとしてるあたし達は、廊下にいたやつらにガン見されている。







 そんなことはこれっぽっちも気に留めず、美結は勢い良くドアをスライドさせた。






 「おっはよー!」






 美結が中にいた男達に話しかける。みんなバラバラに美結に返事をすると、あたしに目線を向ける。その中の一人の理久が、美結に手招きをした。






 それを見ると美結は迷わず理久の所へ走っていった。






 え、待って美結…あたしはどーしろと。






 「ん?この子が佐倉優愛?…へぇ、これなら1回くらい遊んでもいいかもね。」






 チャラそうな男が、澄ました顔で壁に寄りかかっている透に話しかけた。






 ん?誰だこいつ。






 「海、これで気が済んだか?」






 透の問いに、満足そうにウンウンと頷くチャラ男。え、なに?あたし絞められるんじゃないわけ。






 透とチャラ男の会話を聞くと、あたしのことが話題に出てチャラ男が気になって呼び出したらしい。






 「ゆ〜あ〜ちゃん♪俺、真嶋海~マシマカイ!今日、俺とどう?」






 チャラ男がニコニコしながらあたしの肩に手を回してきた。






 …冗談じゃない。透の族の人間とは関係を持たないようにしているのに。






 透はあたしの元カレ。いろいろあって別れた。今、透はあたしのことを嫌っている。きっと、本当は潰したいくらいに。






 そんなあたしに仲間が関わったと知ったら、あとからめんどうのはあたし。






 それを承知でなんであんたとなんかシなきゃいけないわけ?ホント、ありえないから。






 「今日は先約がいるから。まぁいなくても、透が許さないんじゃない?」






 チャラ男に笑顔でそういうと、透はあたしのことを睨んだ。






 ほら、ね?あたしがなにされるかわかんな
いんだから、勘弁してよ、ホント。






 「わかってんじゃん?ものわかり、よくなったんだなぁ?優愛。」






 ブレザーの内ポケットからタバコを取り出して一息すると、透がニヤリと笑った。






 「えぇ〜、なんでだよ透。なに?お前優愛ちゃんのこと狙ってるとかぁ?」






 海?だっけ?ちょっと黙ろっか。