多分相手は彼氏。携帯を耳にあて、もう片方の手で髪をクルクルと指に絡ませる。






 「あ!理久?優愛行きたくないって言ってる。…え?あー、マジか…ん、はーい。」






 美結は不機嫌のまま電話をきった。はぁ、とため息をついてあたしの目を見る。






 「倉庫来なくていいから、今空き教室来いって。これは透が言ったことだから、行こ?優愛。」





 透というのは理久の族の総長。本名は城崎透~シロザキトオル。その総長からのお呼び出しだそうで。






 総長が呼んでいるっていうことは、理久の彼女の友達のあたしが拒否すれば理久の面子に関わる。






 理久は美結の彼氏というだけあって、悪いやつじゃない。ここは当然、理久の面子の為に行かなければいけない。






 ほら、と急かす美結の後ろを黙ってついていく。






 あーぁ。なんであたしが呼び出されるの。族の男に手出したとか?それとも遊べとか?…それはないか。






 呼ばれた理由を自分の頭の中で探してみるが、一向に見つからない。






 「お!美結ちゃんと優愛ちゃんじゃん♪」






 「やっぱオーラが違うよなぁ〜。」






 廊下を通るたびに上がる歓声。でもあたしと美結は全くそれに気づかなかった。