――帰り道、僕と愛知は家が近かったから、一緒に帰ってた。

「なあ、ホンマは我慢してんちゃう?」

 愛知が小声で言った。

「何が?」

 分かっていたけど、あえて訊いた。

「俺がゲイなん」

「・・・大丈夫」

「無理してない?」

「うん」

 全く無理はしてない。

 変だとおも思わない。

 おかしくもない。

 理由は簡単で、生太と同じ。

 もっとも僕の場合は姉だけじゃなく、兄2人もなんだけど。

 死んだ長男はゲイで、死んだのも、彼氏に振られたからだった。

 次男の流希はバイで、最初は普通だったらしいが、長男の影響もあって、そうなったらしい。

 よく言えに男も女も連れ込んでバタバタやってんのをみたら、何でもなくなる。

 ただ、それを人に言う気にはなれなかったし、戸惑っていた。

 でも、この時は、愛知にだけでも行ってみようかという希になった。

「あのさ」

「なん?」

「うちさ、兄ちゃん2人いんだけど、上は死んじゃったんだけど、ゲイでさ。↓は今中1でバイなんだよね。双子の姉ちゃんもー・・・」

 愛知は一瞬黙って、噴出した。

「マジ?」

「マジ」

「へー・・・」

「うん・・・」

 僕も笑った。

「お前も?」

 愛知が僕を覗き込む。

「・・・違うよ」

 間を置いて言った。

「やな。すまん」

 愛知が頭をワシワシと毟った。

 そうこうしているうちに家について分かれた。