彼の足をたどって、
着いたのは、中庭だった。
「あの、何か?」
私が話しかけると、彼は、一度うつむき、私を見た。
「市川華菜さん、俺と、付き合ってください!」
「え?!」
わ、私?!
いきなりのことで、頭がこんがらがる。
「今答えは出さなくて大丈夫です、だから、考えてほしいです……」
でも……、
私、まだ、この人のことよく知らない…。
てゆうか、名前さえ知らないのに…。
「あの…」
「はい?」
「お名前……、教えてもらってもいいですか…?」
「え?」
目が点になる彼。
そりゃそうだよね……、皆が騒いでるのに私だけ名前知らないなんて…。
「あっ………、あの………ごめんなさい…。…私…、あなたのことよく知らなくて……」
弁解するだけしてみると、彼は、
「あ、そっか、そうだね!俺は、楠本将汰。B組だよ」
楠本くんは快く軽い自己紹介をしてくれた。
「あのさ、さっきのことなんだけど、考えて欲しいんだ。だめなら、友達からで……」
告白のこと、だよね。
「……わかりました……」
「うん、じゃあまたね、ありがとう」
私が返事をすると、楠本は優しく笑って校舎内へ向かった。
私、時代遅れだな………。
なんて、今更思った。