パタパタと聞こえていた蒼ちゃんの足音が遠ざかると、その場にペタリと膝が落ちた。

取り残されたここはまるで抜け出せない暗闇のよう。

ゴールの見えない道を進んだって意味がない。

でもそれが蒼ちゃんを守る唯一の手段なら、心には鍵をかけたままで。


ずっと好きだった人に想いを伝えることも許されない。

堪えていた涙がポロポロとこぼれ落ちてくる。


幸せになんてなれるはずがなかったの。


先も見えない暗闇で、藻がき、苦しみ、朽ちていく。



行き場を失ったこの想いはどうすればいいのかな。


「………」


小さい頃から少しずつ降り積もった恋心。


ねぇ。


言葉にしないと蒼ちゃんの前でうっかり言ってしまいそうになるから、今だけ許してほしいの。


桜はもうすぐ散るだろう。

わたしのこの気持ちも桜のように散ってくれたらいいのに…………。



「蒼ちゃんのことが好きです」



静かに零れるように出た呟きは、風に運ばれ消えていった。