「蒼ちゃん!これ落としたよ!」



わたしがプレゼントした物をまだ持っていてくれたことが嬉しすぎて、さっきまで「声なんか掛けるもんか」と思っていたことはすっかり忘れていた。

ただ、それだけしか考えていなかった。


声に気づいてくれた蒼ちゃんと目線がぴったりと合うと、


あっ…………。


どんどん不機嫌になっていく表情を見てようやく気がついた。



そうだ、今の蒼ちゃんはわたしの知ってる蒼ちゃんじゃないんだってこと。


「ちっ………」


「えっ!?」


そんな戸惑うわたしは完全に無視。

軽く舌打ちをしながら、蒼ちゃんは私の腕を掴み、


「そ、蒼ちゃ………」


近くにあった教室へと無理やり連れ込まれた。



灯りのひとつないこの教室はとても薄暗く、不自然な寒気が全身をまとう。




ー…バンッ!

壁に体を押し付けられ、目の前には蒼ちゃんがいる。


流行りの壁ドンというやつだ。


女の子が胸キュンするシチュエーションのひとつのはずなのに、今のわたしは恐怖しか感じない。