なんとか必死に逃げようとも、大人の蒼ちゃんに敵うはずもなく、

「海里っ!」

あっさりと腕をつかまれてしまった。


「そっ……蒼ちゃん………」


長すぎる脚のせいで歩幅も違うし、ましてや昔から運動も得意な蒼ちゃんから逃げ切れるわけがない。


わたしにもう少し身長と運動能力があれば………。

これ以上蒼ちゃんにこんな恥ずかしい格好見られずに済んだかもしれないのに。


シーンと静まり返った廊下はなんだか居心地が悪い。

蒼ちゃんと2人っきりだ。


腕をつかまれたまま振り返ることもできず、ただひたすらに蒼ちゃんの言葉を待っていた。


「…………どうして逃げたりするんだよ」


そんなの決まってる。

きっと蒼ちゃんだってわかってる。


この格好見られるのが恥ずかしいからだよ!


しかしそんなことを言えるはずもなく、


「な……成り行きで……」


絞り出した適当な言葉で誤魔化した。

自分で言った言葉なのに、考えてみたらよく意味がわからない。


「成り行きで逃げるのか………?」

ほら、蒼ちゃんだって戸惑ってる。


呆気に取られている蒼ちゃんの目を盗み、勢いでつかまれていた腕を振り払った。