「………あれ?」
ふと、視線を床に落とすとさっきまでなかった物が足元に落ちている。
これ………生徒手帳?
拾い上げるとそこには芹澤遥の文字と顔。
遥の物だ。
「なんだか、懐かしいな」
遥と知り合うきっかけになったのはこの生徒手帳。
あの日わたしが拾っていなかったら、別の誰かが拾っていたら、きっと今とは違う別の未来があったんだろうな。
遥ったらまた落とすなんてドジすぎる。
早く届けてあげよう。
ドアを開き、出て行ったばかりの遥を追いかけたーーーー。
「………わっ!」
ところが、廊下に出た瞬間ドンッと誰かにぶつかってしまった。
「大丈っ……辻宮?」
この、声は………。
わたしが聞き待ち構えるはずもない。
何年も前から知っている大好きな声。
「そっ……桐生先生!」
目の前には蒼ちゃんこと、桐生先生が立っていた。



