幼なじみが、先生で。



家のインターホンの音をこれだけドキドキした気持ちで聞いたのは初めてかもしれない。


家の中からは微かに足音が聞こえてくる。

きっと、蒼ちゃんのお母さんの足音だ。


足音が近づくにつれてさらに緊張という2文字が全身に駆け巡る。


気持ちを落ち着かせるため「ふぅ……」とひと息吐いてみたけれど、果たして効果はあるのだろうか。


「はーい?」


扉が開いたと同時に、わたしの口も動いた。


「……あっ、あの!わたし!!!です!」


さっきのひと息にはなんの効果もなかったらしい。

家を訪ねた人が最初に言う言葉じゃない。

思いっきり声が裏返ってしまった。



「あらー、海里ちゃんじゃない!久しぶりねぇ」


蒼ちゃんに似た優しい笑顔。

いや、蒼ちゃんがお母さんに似たんだろうけど。


その笑顔と声のおかげで緊張が少し和らいだ気がする。



「おっ、おおお久しぶりです!あの………その……」


久しぶりすぎて何から言えばいいのかわからない。


「蒼ちゃんに会いに来た」と言えばそれで済む話だけど、なぜかそれが言えなかった。