ーーーなんて、今は自分のことより芹澤くんのことを考えていたいの。


逃げてるって言えばそれまでだけど、事実だから仕方ない。


バシャバシャと水溜りの上を通り過ぎ、降りしきる雨の中に立つ芹澤くんに傘を傾けた。


「帰ろう、芹澤くん」


想いは全部、雨の日に残した。

もう、1人で苦しまなくていいの。

いつでもわたしが側にいる。


「……遥って呼んでくれないか?誰かに……海里に、そう呼んでほしいんだ」


「うん、遥」


ーー神崎先生、今日からはわたしが代わりにたくさん遥って呼ぶことにするよ。


また近づいた2人の距離は以前よりずっと落ち着く。

なんだか、温かい。



雨の日は切ない気持ちになってしまうもの。

でも、隣にキミが居ればもう怖くないよ。


どんなに泣いても、きっと暗くなった先に素敵な未来が待ってるって信じてるから。



「あっ、雨止んだ?」



雨上がりの空に架かる7色の橋。

哀しみを乗り越えた先でしか見られない宝物。


もう、大丈夫。



手を伸ばせば掴めそう。


今日はそれくらい、体が軽かったんだ。