幼なじみが、先生で。



始業式も終わり、せっかくの結衣の誘いを断ってしまった。

クレープ食べたかったよ……。


だけどそんなことをいつまでも考えている余裕はない。

ひたすら走りながらそう思った。


始業式が終わってからも頭の中は蒼ちゃんのことでいっぱい。

聞きたいことがたくさんあるの。



蒼ちゃんはどこに行ってたの?

どうして先生になって戻って来たの?

ずっと何をしてたの?


質問が頭から溢れでそう。


蒼ちゃん…………。






「はぁ………」


走り続けたせいで足が痛い。

息も上手くできなくなるほどずっと走っていた。


この扉の前に来るのは何年振りだろう。

表札には昔よく見た『桐生』の文字がある。


蒼ちゃんが居なくなってから今日まで1度もここに来たことがなかった。


蒼ちゃんのお母さんやお父さんはとても好きだけど、ここに来ても蒼ちゃんには会えない。

そう思と寂しくて、辛くて、体は動いてくれなかった。


でも、今は…………。


僅かに震える指先で力強くインターホンを押した。