始業式も終わり、せっかくの結衣の誘いを断ってしまった。
クレープ食べたかったよ……。
だけどそんなことをいつまでも考えている余裕はない。
ひたすら走りながらそう思った。
始業式が終わってからも頭の中は蒼ちゃんのことでいっぱい。
聞きたいことがたくさんあるの。
蒼ちゃんはどこに行ってたの?
どうして先生になって戻って来たの?
ずっと何をしてたの?
質問が頭から溢れでそう。
蒼ちゃん…………。
*
「はぁ………」
走り続けたせいで足が痛い。
息も上手くできなくなるほどずっと走っていた。
この扉の前に来るのは何年振りだろう。
表札には昔よく見た『桐生』の文字がある。
蒼ちゃんが居なくなってから今日まで1度もここに来たことがなかった。
蒼ちゃんのお母さんやお父さんはとても好きだけど、ここに来ても蒼ちゃんには会えない。
そう思と寂しくて、辛くて、体は動いてくれなかった。
でも、今は…………。
僅かに震える指先で力強くインターホンを押した。



